介護の仕事で何を話しかけても必ず「はあ?」と聞き返されたりキョトンとした顔をされる介護者の場合は、話すスピードが自分では意識していなくても、速すぎるということもあるのです。日本人の話すスピードは、かなり速くなってきていることをご存知でしょうか。ニュースのアナウンサーが1分間に読む字数も、かなりアップしていると言われています。
若いスタッフにとって普通のスピードで話しているつもりでも、お年寄りにとっては相当なスピードで話をされているのです。大事なことは、話の間合いを十分にとるようにすることです。会話の最中に間があくことを避けたがる人もいるかもしれませんが、高齢者との会話では逆にこの間を上手に使うようにしたいところです。
たとえば「誰それさん」と呼びかけてから「?」と相手の注意が向いたところでテンポを一つとって、それからゆっくりと話すようにすると、よい間となります。また興奮したときや怒ったりしたときなど状況に応じて相手の目をのぞき込んだり手を握ったりしますが、そのようなときにも一瞬の間をとるのです。あまり興奮しているようなら、膝か腰のあたりに手をあてるというのも間をとるための一つの手段です。このときに、自分も息を止めないようにすることです。ゆっくりと、少しずつ息を吐いてみるとよいでしょう。「あ、うん」の呼吸という言葉がありますが、介護者がゆっくりと息を吐くことで、高齢者も無意識のうちに身体が緩むことになるのです。